Prince Takamado Visiting Student Scholarship

Message from Past Students - 第13回留学生 (Y.F.)

クイーンズでの生活

まずはこの場をお借りして奨学金関係者の皆様方に心より感謝申し上げます。おかげ様で、より充実した留学生活にすることができました。よく学び、よく働き(大学の授業の一種です)、よく遊んだ9か月でした。この報告では授業、クイーンズ・ビジネス・コンサルティングの一員として活動した経験、そして遊びの3つの側面から留学生活をお伝えいたします。

【授業】

総じて言えるのはクイーンズと慶應で授業のスタイルが全く違っていたということです。慶應ではより網羅的に授業が行われるのに対し、クイーンズでは量は少ないですがより深い内容まで突き詰めた授業が行われます。実際、留学前は1学期あたり、週90分の授業を15個ほどとっていました。一方クイーンズでは週180分の授業を3~4個しかとっていません。ただし、クイーンズではその分すべての授業に、毎回30ページ以上にも及ぶことがある事前課題とレポート、プレゼンテーションにグループワーク、テストがついてきます。授業は週2回あるので、たとえ4コマしか履修していなくとも数十ページの課題を3日ほどでこなさなければいけません。慶應ではテストだけの授業も少なくなく、両方の大学で全く授業の形式が違いました。私はクイーンズのタイプの授業のほうが圧倒的に好きでした。クイーンズでは「学ぶ楽しみ」を経験しました。たしかに予習が大変ではありましたが、その分授業の理解度も高まります。また、少人数のクラスということもあり、ほぼ毎回授業内でディスカッションもあります。そのようなアウトプットの機会があることで、より一層授業への理解が深まりました。そして授業の理解度が深まり、わかることが増えていくと授業をますます楽しいと思えました。

クイーンズの授業は扱うテーマもユニークでした。例えば、私はリーダーシップの授業をとりました。リーダーシップの定義は非常に多岐にわたり、時代によっても支持される定義は異なります。リーダーとして、身体的な力の強さが求められた時代もあれば、とにかく人を引っ張っていく力さえあればいいとされることもありました。21世紀に入り、倫理的な正しさが求められる傾向が強くなってきました。その授業における最終的な目標は、そういった多くのリーダーシップ論を学ぶ中で自分の中、リーダーシップとは何かを決めるということでした。リーダーシップ論を学ぶ過程で社会人にインタビューすることもあり、理論だけにとどまらない授業でした。リーダーシップの授業で学んだことは日本に帰国後も、チームで何かをするときに役立っています。ユニークな授業に関していえば起業の授業もありました。チームごとに自分たちでビジネスプランを考え、そのアイディアを毎回ブラッシュアップしていくものでした。私たちは竹素材からできた洋服を作る会社をはじめました。材料はどこから仕入れて、どこの会社にデザインを任せるか等、実際にビジネスを始めるかのように細かくビジネスプランを詰めていきました。このように、クイーンズの授業は日本の大学ではあまり見られないユニークな授業が多かったです。私はSmith School of Businessという学部でビジネスを専攻していたのですが、授業が実践的であったのも大変魅力的でした。プログラミングの授業では、自分たちでプログラムを作るだけでなく、携帯会社から実際の顧客リストをもらい、プログラミングによって顧客のパターンを分析して、どうすれば売り上げを上げられるか発表しました。

クイーンズの授業は、私が慣れ親しんできた慶應の授業に比べて量的にも、扱うテーマ的にも、その領域に関しても全く違い、戸惑うことも多々ありました。しかし、自分の選んだテーマに関してとことん深く学べる楽しみは、間違いなくこの留学を非常に充実したものにしてくれたものの一つです。

【クイーンズ・ビジネス・コンサルティング(QBC)】

私がクイーンズ大学を選んだ一番大きな理由はQBCのメンバーに加わり、プロジェクトに参加したかったからです。QBCとはクイーンズ大学が持つコンサルティングのチームで1973年以来、650以上のプロジェクトに取り組んできました。このプロジェクトでは実際に生徒がクライアントを持ち、学校はクライアントからお金をいただきます。そしてこのプログラムに参加した生徒は単位がもらえるという仕組みです。もともとコンサルティングに興味があった私は、大学選びの際にクイーンズでは実践の場が用意されていることを知り、クイーンズへの留学を決めました。現地のトップレベルの生徒がとるプログラムだけあって、非常にハードでした。レクチャーはなく、クライアントが決定後はチームでほぼ毎日集まり、一週間に一度の教授とのミーティングに備えるという形でした。私たちのクライアントはある町で、その町の人口を増やすというものでした。その町の背景知識からリサーチをしていき、町の強みと弱み、そこに社会の動きを考えました。そして、ターゲットを定め、どのように、自分たちで決めたターゲットをクライアントの町に引き込むか、他の競合となる都市と比較しながら、施策を考えていきました。

最初は、話し合いにすらついていくことができず自分の無力さを痛感しました。それでも、わからないことはわからないと恥を捨てて尋ね、衝突することを恐れずに積極的に仲間との議論に加わっていきました。同じことを何度も尋ねたことも多々ありましたが、チームメイトも必死にそれに答えてくれました。そのおかげもあり、プロジェクトはうまく進みました。今でも、鮮明に覚えているのは最終プレゼン発表の日のことです。町の役員の方が何人も参加していたのですが、その中の一人の、スキンヘッドで刺青の入っている強面の方がプレゼンの最中、終始しかめ面をしていました。しかし、プレゼンが終わった後に、「私たちの町のためにここまでしてくれてありがとう。本当に素晴らしいプレゼンだった」と言っていただけたときのにこやかな表情は今でも鮮明に覚えています。半年間のQBCのプロジェクトを通して、コンサルタントになりたいという思いはさらに強くなりました。実際、帰国後は、日本のコンサルティング会社でインターンをしています。QBCにおける経験は留学生活をより有意義にしただけでなく、今後にも役に立つ大変貴重なものとなりました。

【遊び】

授業、コンサルティングともに留学の重要な要素ですが、もう一つ忘れてならないのが授業やプロジェクトがない時の過ごし方です。クイーンズの学生は勉強も大変ハードにしますが、その分遊びもハードにします。金曜日の夜には友達の家でパーティーが開かれたり、大学の敷地内にあるクラブに行ったりしました。日本ではそのような文化はあまりなく、新鮮で刺激的でした。また、週末はサークル活動をしていました。クイーンズで過ごした最初の学期ではバスケとサッカーのサークルに所属していました。サッカーのチームでは私以外の学生はみなヨーロッパから来ており、まるでプレミアムリーグでサッカーをしているようでした。その中でも、スロベニアから来た学生とは特に仲良くなり、週末を使ってオタワに二人旅をしに行ったりしました。また、二学期目では、サークルには所属しなかったものの、空き時間があれば大学のジムでバスケットボールをしていました。そこで、仲良くなったポーランド人とフランス人とは長期休暇中にトロントまで行き、本場のNBAの試合を見に行きました。長期休暇中には他にもたくさん旅行に行きました。ニューヨークやワシントン、シカゴやラスベガス、ロサンゼルスやサンフランシスコなど、北アメリカの主要都市を回りました。この交換留学をしていた9か月は今までで一番旅行をした期間でしたし、おそらく今後もこれ以上旅行をする9か月間はないでしょう。今まで海外経験がほとんどない私にとっては、これほど短期間にあらゆるところを訪れることは非常に新鮮で忘れられない思い出でとなりました。

このように、クイーンズでは勉強、コンサルティング、そして遊びとどれもすべてが充実していて、人生で一番濃い9か月となりました。ただ、クイーンズで得た最も大きな財産は、クイーンズで会い、一緒に過ごした友人たちです。彼らは全員私と全く違う背景を持っています。一番仲の良い友人はシリアで生まれました。移民としてカナダに来ています。過ごしてきた環境は全く違いましたが、実際クイーンズで会い、一緒に過ごしてみると非常に気が合い、今でも連絡を取りあう仲になっております。たった9か月ではありましたが、彼をはじめたくさんの友人たちに巡り合えたことは本当に価値のあることです。繰り返しとはなりますが、このような大変貴重な機会を与えてくださった奨学金関係者の皆様には心より感謝申し上げます。留学で得た経験を踏まえ、今後も一生懸命精進してまいります。そして、日本とカナダの関係性をよりよいものにできるよう貢献させていただければと思います。