Prince Takamado Visiting Student Scholarship

Message from Past Students - 第3回留学生 (K.K.)

カナダ留学で学ぶ世界

カナダから帰国してから早いもので半年経ちますが、大学三年の秋から行かせていただいたクイーンズ大学での留学は4年間の大学生活の中で、いや、今までの人生の中で最も内容の濃い1年だったと思います。留学中は新しい発見や驚き、そして笑いやハプニング満載の毎日だったので帰国後は物足りなさと寂しさに途方に暮れてしまうこともありましたが、やはりクイーンズでの一年がこれほどまでに充実していたのは多忙なスケジュールの中に多くの人々との出会いがあったからこそだと思います。

そのため、留学では数え切れないほど様々な体験をさせて頂いたのですが、その中でも友人達と毎日過ごしたHarkness International Hallでの日常生活が最も印象深く心に残っています。Harknessは名前の通り留学生を主に受け入れている寮なのですが、フロアごとにキッチン、バス、トイレをシェアする形になっており、私のフロアの学生も秋から冬学期にかけてカナダ、オーストラリア、韓国、スウェーデン、ナイジェリア、香港と大変国際色豊かな環境で生活させていただきました。この学生寮ではよく各国の留学生によるディナーパーティーが開かれました。時には皆で自国の料理を持ち寄ってポットラックパーティーをしたり、私も皆のリクエストでお寿司の作り方を教えましたが、普段はあまり口にすることができない各国の本場の料理を試食し、その上作り方まで学ぶことができるのはHarknessならではの醍醐味ではないかと思います。その他にも、仲良くなったインド系イギリス人の友人には多くのインドの音楽や映画を紹介してもらい、同じアジアの国でありながらあまり知らなかったインドの文化について改めて学び、日本との文化の違いや、お互い持っていた偏見について話したり、スウェーデンの友人とは同国が進んだ環境保護のため技術を持っているため、環境問題について語ったりとこの一年ではカナダ以外の国々や文化についても多く学ばせていただきました。

今では信じられないのですが、日本人同士でも共同生活をすることなど全くなかった私は異文化から来た学生と一緒に住むということに対して当初は戸惑いや不安を持っていました。実際うまく他の学生の会話に参加することができず落ち込み、大量の課題があることを理由に部屋に閉じこもっていることも多々ありました。しかし、時間が経つにつれ常日頃からドアを開けっ放しにしているカナダやヨーロッパの学生に比べ、自分は異なる言語や文化の中で閉鎖的になっていたことに気付かされました。そのため、私も閉まっていたドアを毎日少しずつ開き始め、キッチンなどで会ったときなどは挨拶だけでは終わらせず、自分から話題を提供し自分のことを知ってもらおうという努力しました。それによって、最初は会ったら挨拶だけするような関係だった相手も自分のことについて話してくれ、徐々に自分の国や家族のこと、授業のことなど会うたびに話題が増え、しまいには勉強をそっちのけで何時間も部屋に入りこんで話し込んでしまったり、用もないのに声が聞こえるとキッチンに行って、テレビを見ながら語り合っているうちに皆が集まり盛り上がって夜中になってしまったりということは日常茶飯事でしたが、やはり同じ文化に住んでいてもそうですが異なる文化同士、間違いや衝突を恐れるのではなく相手を信頼して積極的に自己表現や意見を主張してこそ、文化に関係なく互いの信頼関係が生まれるのではないかと思いました。

クイーンズでの留学中、友人との交流や遊びの部分以外ははほぼ勉強で詰まっていました。当初は日本と比べ物にならないほどの課題の量に圧倒されましたが、予習なしではついていけない濃い授業と大量の課題が実に私の留学生活を充実させていたもう一つの要因でした。毎日、山のように出される課題をいかに効率よくこなすかということが大切で、その努力によって作った時間に思い切り遊ぶのです。驚いたことはテスト期間中は図書館が24時間オープンしているということです。私もよく利用させていただいたのですが、テスト期間が近づくにつれ豊富に設置されたコンピューターや学習机などは空き席を見つけられないほど埋まっていきます。また、誰もが真剣に勉強しているため、緊張感を味わいながら大変刺激的な環境で勉強ができるのですが、どの学生も日本と比べメリハリのある学生生活を送っているようでした。

授業のなかでも私が出発前から期待をしていたのがCanadian studies のクラスでした。この授業では、五年前に高校で留学したときには考える機会のなかった、先住民やケベック州の歴史、同じ大陸を共有するアメリカとの関係や多文化主義についてなどカナダを語るには欠かせないトピックを勉強しました。特にカナダの多文化主義については以前から関心があったため、カナダのクイーンズ大学での留学は絶好の機会だったのですが、授業では教授や資料からだけではなく、ゲストスピーカーや実際にカナダに住む生徒たちの意見を生で聞くことができたことも大変新鮮でした。また、授業外でも生徒の認識を高めるためクイーンズ大学が主催したコンファレンスにも幾つか参加させていただき、この一年を通し様々な視点から多文化主義について学ばせて頂きました。

多文化主義は1970年世界で初めてカナダが導入し、現在オーストラリアやヨーロッパの多くの国々で取り入れられていますが、勉強して感じたことは日本はカナダを始め他の国に比べて大変閉鎖的だということです。カナダでは特にトロントやモントリーオールなどの都市部では中国系、アラブ系、イタリア系など何十もの異なる民族や人種が共存しており、日本人の私でもそこにすぐに溶け込めそうな雰囲気があるのですが、異なった言語や文化背景に関わらずそこに住む全ての人が平等な機会を与えられる社会を持っているという点では世界でもカナダが最も進んだ国だと思われます。カナダの多文化主義はcultural mosaicと言われアメリカの melting pot人種の坩堝と比較され全ての文化をmixするのではなく、それぞれの多様性をより尊重するという姿勢をとっているようです。授業では現在多様性を尊重するあまり、異なった文化間で分裂がおきカナダ人としてのアイデンティティを持つことは困難ではないかと問う学者や、違いを尊重しつつも宗教によっては生存権を害するような儀礼や行いがあり、それをこまで規制するかなどという複雑な問題もあるということを知り驚かされましたが、少子化問題を抱えた日本も様々な考え方や文化を持った人が集まればよりよい考えが生まれ社会経済が活性化されると思いますし、激しさを増す国際競争に勝ち抜くためにもカナダから学ぶべきことは多くあるのではないかと思いました。

最後になりましたが、日加協会様をはじめこの様なすばらしい機会を与え一年間私のことを温かく見守って下さった皆様本当にありがとうございました。将来、私以外にも多くの学生が本奨学金を通してこのようなすばらしい体験をし、カナダと日本の関係がさらに深まっていくことを心よりお祈りいたします。

クイーンズ大学より (2006年12月18日)

寒さもいっそう身にしみる昨今ですが、皆様その後お変わりなくお過ごしでしょうか。出発前には色々とお世話になり大変ありがとうございました。

先週ようやく最後の期末テストが終了し、一段落ついたのですがやはりこちらに来てクイーンズの授業内容の濃さと課題の量には驚かされました。 そのため最初はそのような高レベルの授業を英語で受けるということに困難を感じたのですが、以前から関心のあったカナダの多文化主義や歴史を取り扱っている授業や西洋の歴史と思想、ビジネスの授業などは大変興味深く、教授の助けや真夜中まで図書館で勉強した甲斐もあり多くのことを学ばせていただきました。 特にカナダの授業では先住民の歴史やケベックの歴史を考察するにあたり、日本がカナダなどの国と比べて国際社会として未熟であること、そして移民など将来日本でも増加すると考えられる小数民族への対応のあり方などを考えさせられました。

来学期もこの授業を継続して履修する予定ですが、私たちがカナダから学ぶべきことは多く、今からとても楽しみにしています。

生活面ですが、こちらも言うまでもなく楽しく、大変充実した日々を過させていただいています。特に世界各国からの学生が集まるHarkness International Hallでの生活は常に新しい発見の毎日で勉強の合間に食事を作りながらキッチンで会話を交わしたり、自国の料理をそれぞれ作りディナーパーティーをしたり、トロントやオタワなどに旅行に行ったりするなど、一生にまたとないような貴重な経験をさせていただきました。 来年は日本語の授業でのボランティアや来年からの留学生のためのイベントの運営の補助などもさせていただく予定ですが、日加協会の皆様を始め様々な方々が与えて下さった特別な機会ですので、残りの半年も多くのことに挑戦し人々との出会いを通して出来るだけ多くのことを学ぶことが出来たらと思っております。

寒中とはいえ、ここ数日カナダでは大変穏やかな気候が続いています。クリスマス休暇はモントリオール近くの友人の実家に滞在する予定なので、ホワイトクリスマスになることを願っています。 東京の街もイルミネーションなどで美しい時期なのではないでしょうか。・・・・どうかお体をお大切になさってください。

カナダより新年のご多幸を心からお祈り申し上げます。