Prince Takamado Visiting Student Scholarship

Message from Past Students - 第9回留学生 (R. T.)

高円宮記念クイーンズ大学留学奨学金を応募した主な2つの理由は英語力の向上と海外の学生の雰囲気を知るということでした。この報告書では主にこの二つについて述べたいと思います。

私は過去一度3週間語学留学としてボストンに行ったことがありました。そこでは他国からの人たちが流暢な英語を話しており、彼らが何を言っているか分からないので話に入れず、非常に悔しい思いをしました。その時自分の英語力の無さを痛感したと同時に、最低一年は留学しないと本当の英語力は身につかないと確信しました。そんな中この奨学金を見つけ、幸いにも奨学生として採用していただけることになったので、この機会をフルに活用して英語を問題なく使えるレベルまで伸ばしてやろうと決意しました。私は英語力には日常で友人等とコミュニケーションをとるときに用いる英語とアカデミックな事柄を議論するときに用いる英語の二つがあると思っています。前者は積極的に友達を作り、彼ら彼女らと普段から一緒にいることで伸ばせると考えました。実際にいざ行ってみると、最初の週はExchange studentのためのオリエンテーションがあり、そこで幾らかの班に分けられたのですが、周りの人の英語が早く何を言っているのか分からないことが多くありました。それでもこれが分かるようになればレベルアップできるし、さらにもっと普段の生活が楽しくなることは間違いないと確信し、必死に食らいつきました。結局そのオリエンテーションがきっかけとなり、その後多くの時間を共に過ごすことになる友達を作ることができました。留学中、友達と過ごす時間は第一に考えていました。世界中の友達と常日頃から触れ合える機会は日本ではなかなかないし、友達とわいわいしていることが日常英語上達の一番の近道だと思ったからです。

実際にその時間は有意義かつ非常に楽しいものでした。特に印象に残っているのは9月末にみんなでトロントへ旅行に行ったことです。

写真はナイアガラの滝で撮ったものです。ナイアガラの滝はカナダで一番行きたいところだったのですが、その期待をはるかに上回る迫力でただただ圧倒されるばかりでした。この旅行の他にもモントリオールやケベックシティ、オタワなどに友達と行き、どれも非常に楽しく、また英語力の向上にもつながったと思っています。それでも支障のない英語力という壁は大きくて、実際寮の中のキッチンでみんなが集まって話している中に入っていくのは非常に難しく、意を決して入っていっても皆が何を言っているのかが分からないので何も言うことができないということが多々ありました。そのような時は非常に悔しく、これが分かったらどんなに楽しいだろうと思い、次のモチベーションにつなげるといったことを心がけました。アカデミック英語については、授業中に積極的に質問したり、生徒と授業の内容について議論したりすることで上達すると思っていたので、実際にそれを行いました。最初は授業中に質問するのはとても緊張しましたが、それは緊張した中でアカデミックな英語を使うという観点から非常に重要なことでよい練習になりましたし、それによって教授との距離を縮めることもできました。実はクイーンズ大学での8か月が終わった後Summer studentとしてドイツのハンブルクにあるトロント大学の教授の研究室に5か月間滞在したのですが、その推薦書を書いてくれたのも履修していた授業を担当していた先生でした。また、生徒間の議論にもできるだけ入っていってアカデミック英語を練習しました。宿題をカナダ人の学生に教えられた時はとてもうれしく、学問(特に物理学)には国境がないことを実感しました。そこでよく物理の議論をしていた友達とは現在も定期的にスカイプで議論をしています。写真はその彼と最後に撮ったものです。後ろに見えるのはよく一緒に議論をしていた彼の卒業論文のポスターです。

英語力の向上と並んだ留学のもう一つの目的は海外の学生の雰囲気を知るということでした。将来は海外に出たいと思っていましたし、よく海外の学生は日本の学生に比べてよく勉強するといったことを日本では聞いていたので、実際海外の学生はどういったモチベーションで勉強していてどういう生活を送っているのかということに興味がありました。実際に行ってみると、クイーンズ大学の学生はよく勉強していましたが自分の学科の学生も全く負けていないことが分かりました。また自分の学科では授業は最低限、そこから自分の興味のあることは自分で勉強するといったスタンスの学生が多いのに比べて、クイーンズでは課題が多く出され、学生はその課題を解くためにしっかり勉強する代わりに課題以外のことはしないというスタンスの学生が多いのが印象的でした。どちらにも一長一短はありますが、よく言われる海外の学生は日本の学生に比べてよく勉強するという議論はこのようなスタンスの違いに根差したものであるかもしれず、必ずしも当てはまるものではないと感じました。ただ、あちらの学生の方が積極的に発言をするというのは正しくて、皆間違いを恐れず発言していました。私はMath Bridgeという小学生に数学を教えるボランティアサークルに入っていたのですが、そこで小学生が我先にと手を挙げて発言しているのは印象的でした。ただ何も考えずにただ手を挙げて何か言う子も多かったのでどちらがいいというのは断言できない気もしますが(笑)

アカデミックの面で言うと、先ほど少し言及したドイツでの5か月のインターンに触れないわけにはいきません。カナダの大学は4月終わりの9月始まりなので、その間に大きなギャップタームがあります。その期間にカナダの学生はインターンをしたり、理系の学生の場合には研究室アシスタントをするのが一般的だということをカナダの友達に教えてもらいました。そこでカナダ中の教授にメールを送り、運よくトロント大の教授に拾ってもらうことになり、彼がハンブルクに研究室を持っていたのでそこに行くことになりました。ドイツの研究室での経験はとても刺激的で、将来の海外留学を含め色々なことを考える契機になりました。クイーンズ大学と直接的な関係はありませんが、この奨学金でカナダに行かなければ経験することが間違いなくできなかった、もしくはそもそも考えもしなかったことでした。

振り返ってみると本当に楽しく、充実した一年間でした。もちろん時には辛いこともありましたが、そのような経験も結局はためになるもので、それらのおかげでちょっとやそっとのことではビビらないような精神力も得ることができたと思います。かけがえのない一年を与えてくれたこの奨学金に感謝するとともに、もし少しでも挑戦したい気持ちを持っている人には是非応募してほしいと思います。