山野内在カナダ大使

2022年6月になり、新緑の香りを感じ始めるようになりました。当地においても新型コロナウイルス感染拡大から約2年3ヶ月が経ち、徐々に社会がノーマルな姿を取り戻しつつあることを実感する今日この頃です。

そんな中、6月最初の週末である4日と5日の2日間、「The Power of Flowers」と題する生け花展が在カナダ日本大使館のオードトリウムにて開催されました。

実は、過去2年余に渡り首都オタワでは、新型コロナ感染爆発の影響で、人が密集するイベントが対面で行われる事はありませんでした。日本大使館も全ての文化行事をオンラインで行ってきました。正に、この展示会は、新型コロナ後、初のイン・パーソンの行事でした。誠に意義深いものでした。人と人とが集い、360度様々な角度から、更に全体を俯瞰し或いは非常に近接してそれぞれの素晴らしい作品を鑑賞する事が出来ました。その上、作品に込められた思いを直接、作家さんから聞くことも出来ました。オンラインでは得られない作品展示の魅力を体感する素晴らしい機会でした。

展示会には、2日間で例年の来場者数の約2倍にあたる700人以上の生け花ファンが来場して下さいました。老若男女、実に幅広い年齢層の方々がそれぞれ個性豊かな作品のフォルム、色彩や香り作風を堪能されている様子に感動を覚えました。

古来より、日本には様々な文化が発展して来ました。生け花、お茶、香道、水墨画、書道、能、田楽等々が現代に至るまで非常に豊かに花開いて来た訳ですが、一説によれば、生け花は最も長く受け継がれている文化の一つと言われています。草月流生け花は、お花のみならず、鉄やプラスティックといった斬新な素材も用い、個人の感性や作風を尊重する自由なスタイルであることから、邦人コミュニティがそれ程大きくないオタワ近郊においても広く受入れられています。

草月流生け花オタワ支部は、1996年に設立され、昨年には創設25周年を迎えました。これまで、20回に渡り大使館と共催で展示会を開催されて来ました。今回の展示会には選りすぐりの会員20名が出展されました。なかには、作品の完成に5時間も費やした方もいらっしゃると伺いました。作品に対する愛情とコミットメント、そして熱意に打たれます。

初日に行われた開会式では、クレア・マッカーギ草月流生け花オタワ支部会長及びアン・ブロー展示担当理事に挨拶頂きました。私も一言述べる挨拶の機会を頂戴しました。日加関係において、生け花などの文化交流が大変重要な役割を果たしている旨指摘するとともに,今回の生け花展は、単に展示会に留まらず、新型コロナウイルス感染拡大を超え、二国間で育まれた友情を示す重要な機会となった旨申し上げました。また、賓客としてカナダ日本議員連盟の共同議長を勤めてらっしゃるスタン・クッチャー上院議員からも祝辞を頂き、日加間の幅広い友好関係について熱弁を奮われました。

現在の国際情勢をみれば、政治・安全保障、経済ビジネス、技術等全ての面で急速に変化している激動の時代であります。そんな中、日本とカナダが、生け花のように多様な色や形が素晴らしい調和を生み出すように、それぞれの個性を調和させて協力関係を発展させるように微力ながら最善を尽くしたいと思いました。

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