Prince Takamado Visiting Student Scholarship

Message from Past Students - 第6回留学生 (S. A.)

大きな期待と小さな不安を胸に、カナダに発ってから、早くも1年が経ちました。カナダで過ごした9カ月は、毎日が新しい経験と発見の連続のとても充実した日々でした。多様な文化や価値観に触れ、様々な刺激を受けることを通して自分自身成長することができたと思います。そして何より、カナダの人や文化、自然と触れることでカナダの魅力を沢山吸収することができました。

カナダのことをより知り、違う価値観や文化に触れたいという思いで旅立った私にとって、クィーンズ大学は最高の場でした。クィーンズ大学はカナダ最古の首都キングストンにあり、キャンパス内を含め、歴史的な建物が多く残っています。大学も170年の歴史を持ち、校風や伝統行事などがとても特徴的です。一番個性的な伝統行事は、オリエンテーション・ウィーク、新入生を歓迎するイベントが行われる学年始めの1週間です。私たち留学生に対しても新入生と同様に、様々な歓迎イベントが用意されていました。大学の伝統的応援ソングとダンスの特訓、それを使って観戦する大学対抗のアメフトの試合、ペンキの掛け合い、宝探しゲーム、首都オタワへの日帰り旅行など、毎日がイベントづくしでした。これを通して大学そしてカナダの伝統や文化に触れると共に、その後のクィーンズでの生活を共にする友達をたくさん作ることができました。

カナダでの生活は、毎日が新鮮で発見と経験、そして挑戦の繰り返しでした。ここでは大きく授業、生活一般、文化交流、旅行に分けて、カナダでの経験を記したいと思います。

まず授業に出て驚いたのが、学生の発言頻度です。教授は学生に頻繁に問いかけをし、学生は授業中に疑問点やコメントがあると積極的に手を挙げます。また、グループワークやプレゼンテーションの多さも特徴的で、その中で学生は効率的にコミュニケーションやプレゼンテーションの能力を培うことができます。私は、経済学と商学部授業を中心に履修し、全授業でグループワークが課されました。そこで強く感じたのは、自分の意見を言う重要性です。自分の意見を表現することは他人の意見を否定するものではなく、互いを高めていくことであるということを実感し、積極的に発言することを通して表現力を培うことができました。

学生生活の在り方も印象的でした。クィーンズ大学の学生は、勉強にも遊びにも常に全力投球です。遊ぶ時は羽目を外しすぎるくらい遊びます。オリエンテーション・ウィークや休日のパーティがその典型です。しかし勉学は常に一番のプライオリティーにあり、図書館ではテストの有無に関わらず、常に夜遅くまで課題や自習に励む学生を目にしました。勉強に遊びに常に100%を注ぐクィーンズの学生は、学生生活を最大限充実したものにしていました。

カナダに行く前一番心配していたのは、寒さでした。しかし、9月にキングストンに到着した頃は、インディアンサマーで想像以上に温かく、湖に水着で飛びこめるほどでした。しかし12月にもなると、その湖が全て凍りました。平年に比べると温かい方だ、とカナダ人は言っていましたが、それでも気温はマイナス20℃。温かく保ってある室内から一歩外に出ると、針が刺さるような寒さで肌がひりひりしました。しかし、寮からキャンパスは近かったですし、冬には冬なりの楽しみ方がたくさんありました。スケートに行ったり、湖の上を歩いたり、雪で遊んだりして、初めてのマイナス気温の冬を楽しむことができました。

留学中、連休や冬・春休みを利用して旅行に沢山行きました。カナダは都市によってとても雰囲気が異なり、旅行をする度に新しいカナダの一面を見ることができました。古いヨーロッパ風の建物が並ぶモントリオール、おとぎ話に出てきそうな丘と湖と古い街並みの美しいケベック・シティ、古と新が混ざり様々な文化が集まるトロント、気温から地形から全く異なるバンクーバーなど、行くところ行くところで新しい発見の続きでした。また、学期後には、アルゴンキン州立公園にキャンプに行きました。広大な自然の中で、カヌーを主な交通手段として一週間過ごしました。周りには私たち以外人一人おらず、あるのはただただ広がる広大な湖と、それを囲む木々。そこで感じた自然の壮大さ、目にした美しい景色は、宝物です。真っ暗な闇に光が差し始め、徐々に空と雲、湖と木々を照らし始める喜びと美しさは、忘れることができません。旅行をすることによって、キングストンだけでなくカナダの様々な魅力的な面に触れることができました。

様々な経験を通してカナダを知ると同時に、周りの人により日本のことを知ってもらうために積極的に活動していました。日本食は国の隔たりなくヘルシーかつ美味しいと評判で、寮では友達を交えて一緒に日本料理作りにトライしていました。また、所属していたクッキングクラブの持ち寄りパーティではおにぎりや唐揚げを作ったり、寮の人を集めて手巻き寿司パーティを開いたりしていました。また、節分の日には手描きでお面を作り大豆を買ってきて、寮を回りました。また、他の日本人留学生とともに書道教室を定期的に開いていました。筆と墨を使って文字を書くことは初めての人ばかりで、みんな興味深々な顔で、カタカナや漢字を書いていました。横文字の名前にも漢字の当て字をつけて書くと、とても喜んでもらえ、部屋の壁やドアに貼ってあるのを多く目にしました。その他にも、日本の文化はとてもユニークであると有名で、日本の私の目には普通に映るテレビコマーシャルやバラエティ番組を持ってきて、「何これなぜこんなところで踊ってるの?」「何が起こってるか説明して」など、聞かれることが多くありました。これらを通して、日本の文化をより客観的に見ることができました。

日本を出て気づかされた一番大きなことは、世界には本当に多様な文化、価値観、考え方が存在することです。日本という領域を出てしまえば、当たり前のことなど、何一つありません。そのような中で他人とかかわるためには、異なるものを尊重し受け入れることがいかに大切かを、強く感じました。その上で、互いが異なることを前提に、うまくやっていくためには、自分の考えていること、思うことを他人にしっかりと伝えなければいけない、と身をもって学びました。

また、カナダに行って気が付いたのは、私の前には無限の可能性が広がっているということです。世界には、地域により異なる常識やルールが設けられています。私は今まで、日本のそれに注目し影響されてきました。しかし一歩下がって世界を見ると、そこには本当に多様な価値観が満ち溢れ、新しい可能性が広がっています。私はまだ将来何をしたいか、完璧に具体的には決めるいことができていませんでした。しかし、カナダでの経験やそこで得た新しい感覚や視野の広がりを糧に、今後とも充実した時を過ごしていきたいと思っております。

最後になりましたが、高円宮妃殿下はじめ、日加協会、大使館の皆様、関係者一同の方々にお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。今後とも、この留学を通してできた繋がりを大切にしていきたいと思います。皆様これからもよろしくお願いいたします。