行事 / EVENT
第7回・日加協会Round Table 報告 / The 7th Canada-Japan Society Round Table Report
第7回 日加協会ラウンド・テーブル 報告
「日本における子供病院とカナダ・トロント市のThe Hospital for Sick Children (Sick Kids)との交流について」
9月10日、第7回カナダ・ラウンドテーブルでは、日加協会元事務局長の関根和子様が、トロント市のThe Hospital for Sick Children(Sick Kids)と日本における子供病院との交流についてお話し下さいました。また、ゲストスピーカーとして、NPO法人病気の子供支援ネットの坂上和子様及び神奈川県立こども医療センターの加藤悦與様からも、交流の成果や日本の子供病院の発展とボランティア活動についての課題についてもご説明いただきました。以下ご講演の要約です。
(会員・川村泰久記)
スピーカー
関根 和子 日加協会会員、元事務局勤務
ゲストスピーカー
坂上 和子 様 NPO法人病気の子供支援ネット
加藤 悦與 様 神奈川こども医療センター
Sick Kidsとの出会いと交流の開始
坂上和子様が、ボランティア活動されていた新宿の子供病院からの勧めで2005年、トロントのシックキッズ(SickKids)を訪問、「子供の治療は病気を治す医師だけでは十分でなく、長期にわたる病院生活を送るために必要な病児支援、例えば寝たきりの子供にも遊びを提供するなどが必要である」ことを学ばれた。この訪問を機に坂上氏から駐日カナダ大使館経由で相談があり、2006年日加協会としてトロントのSick Kidsからアン・ブレイキハート氏を招聘することとなった。ブレイキハート氏は明治学院大学講堂で講演をされ自分(関根様)も通訳などで支援した。
Sick Kids訪問(2017年)
その後日本の子供病院関係者がトロントに視察に向かう訪問団が形成され自分(関根様)も参加、坂上様に相談しながら2017年9月にSick Kidsを訪問した。Sick Kidsはこの10年間で更に発展、病院内に設立された組織International Educational Instituteが訪問団の調整窓口となってくれた。トロントの北にあるKids Rehabilitation Hospital(Holland病院(身体的障害のある子供が治療を受ける))も訪問した。実際訪問してみて日本でのボランティアを考える上で以下の点で大変参考になった。
① カナダのSickKidsは治療を我慢して受けさせるのではなく、「痛いの痛いの飛んで行け」という慈愛の気持ちで子供に接するのが良いという基本哲学が感じられ印象深かった。SickKidsには「ファミリー・ベイスト」という思想があり、子供の入院・治療の経験を退院後に家族が新たに入院児を持つ家族に共有して支援することが実践されている。
② カナダではボランティアと病院を繋ぐ有給のコーディネーターが院内に配置されている。これを受けて日本でも加藤悦與様が看護師退職後、横浜病院でコーディネーターの指名を受けて活動されている。加藤様によれば既に27グループ、延べ330名のボランティア登録がある。また埼玉病院ではコーディネーターを職位として認めており、ボランティアの必要性が認められつつある。宮城県の子供病院のように、建設当時からボランティア専用の場所を作った例もある。
③ ボランティアの募集方法については、例えばトロント大学から学生ボランティアを募り、同大医学部の学生が自分の学びの一環でかかわっていた。またボランティア同士でメンターと新人をつなぎ情報共有をしていた。
④ 日本では子どもの病棟に一般のボランティアが入ることに否定的な意見がまだ根強い。感染や事故などリスク予防が先行。今でも不可とする病院は多い。ボランティア組織がどう病院とかかわるかについてカナダとの間に根本的なスタンスの違いがある。
⑤ 日本でもボランティアを受け入れる病院もあるが、病院によって対応に大きな差がある。坂上様によれば、子ども病院にコーディネーターがいるのは日本では全国に9病院くらいであり、ボランティアはあまり歓迎されていないという現状がある。素人が病院に入ることやコーディネーターを有給とすることに抵抗感が依然として見られる。
日本ならではのボランティア活動の広がり
ホランド病院ではマクドナルドが寄贈したプレイルームがあったが、日本でも企業の寄付や協力(建設会社と病院建設前にコミュニケーションがとれる利点あり)が増える傾向はありがたい。
未熟児用の肌着作り。エンゼルちゃん、(数時間で亡くなった赤ちゃん)用の布団、白いドレスを作ってくれたボランティアに母親が感動し後に訪ねてくれた例もある。母親は亡くなった赤ちゃんを荼毘に付すときに、小さな白いドレスを燃やさずに形見としてとっておいた。 このような家族側の心情・ニーズはボランティアがいて初めて知らされる。また白血病の子供は長期入院となる。このような子供対象に院内に動物がいたら、メリーゴーランドがあったら子供たちに元気を与えることができるのに。このような要望の声を届けるのもボランティアの役目。伊豆のホテルが企業貢献として、前年に子どもを亡くした家族を呼び、気持ちを分かち合う集まりを続けている。なおクラウドファンディングによる寄付には関心はあるが、事後に役所やファンド管理団体から求められる報告書提出の煩雑さなどがあり実際のところはハードルが高い。
講演終了後も活発な質問や意見交換があり、講演内容への参加者の関心の高まりが感じられました。